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2016.07.19
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本日(7月19日)の琉球新報で、弁護士小口幸人のコメントが引用されました。

限られたスペースであるため、やや正確性が劣後している形になっていましたので、少し補足説明させていただきます(限られたスペースの中ではうまく表現して頂いたと感謝しています)。

 

1 自動車について(上の写真「警告」という張り紙の方)

テント横の車両に、名護警察署長名で、道路交通法76条3項に違反するので移動してください、という張り紙が貼られていました。

道路交通法76条3項とは、次の定めです。

「何人も、交通の妨害となるような方法で物件をみだりに道路に置いてはならない。」

 

ここで感じた疑問は2つあります。
1つは、「交通の妨害となるような方法」と言えるかどうかです。

まず、目の前の県道には、この車両は全くはみ出ておらす、県道の通行には何らの支障もでていません。県道から山に入っていく里道(舗装されておらず急斜面で場所によっては道路幅2メートルもない)には若干かかっているものの、そもそもこの里道は門で閉鎖されており、いま人や車が通れる状態ではありません。さらに、記者に寄れば通れない状態が2年ほど続いているそうです。そうするとこの車両が、交通の妨害をしているかというと疑問が残ります。

なお、昭和37年4月30日の古い判例ですが、大垣簡易裁判所は、幅7メートルの県道のうち、2.6メートル部分を占拠する形でおかれたロードローラの件について無罪を言い渡しています。

 

2つめは、仮に「交通の妨害となるような方法」だったとして、勝手に撤去できるか、ということです。

76条3項に違反する者に、必要な措置を命じることができるという条文が、81条2項にあるのですが、81条3項には次の定めがあります。

「警察署長は、前項(81条2項)第一号、第二号又は第三号に掲げる者の氏名及び住所を知ることができないため、これらの者に対し、前項の規定による措置をとることを命ずることができないときは、自ら当該措置をとることができる。この場合において、工作物等を除去したときは、警察署長は、当該工作物等を保管しなければならない。」

 

この前項第ニ号が、76条3項違反の場合なのですが、つまりこの定めは、物件を置いた者が誰だかわからないときは「自ら当該措置」をとることができる、つまりどかすことができる、と定めています。逆に言うと、この定めがある以上、「氏名及び住所」を知ることができるときは、命じることができるだけであって、自らどけることはできない、ように読めます。

(氏名及び住所がわかる場合は命じる。わからない場合はどけてよい、という定めに見えます。)

 

報道では、レッカー車が用意されているように報じられていますが、以上のとおり、法律上は警察署長が勝手に撤去できるのか、疑問が残ります。

 

2 テント等について(下の写真「要請」という張り紙の方)

上記車両のさらに隣にテントが置いてあります。こちらについては、さらに謎が多いです。

まず、この道路は県道で、テントの置いてあるところは道路の路側帯だと思われますので、管理者は道理管理者である沖縄県だと思われます。平成28年6月下旬か7月の初めに、沖縄県が文書で撤去の指導をしていた事実も、このことを裏付けています。

今回、テントの撤去を求める要請書を、沖縄防衛局、外務省、海兵隊が貼っているのですが、沖縄県ではない三者が、どういう理由で要請しているのかがまず謎です。同時に、書面では7月19日を経過しても放置されていた場合は、所有権が放棄されたものとみなします、と書かれているのですが、これまたどういった立場で、どういう根拠でこのようなことを告げているのかも謎です。

そもそも、いくら「みなします」と言ったからといって、その法律効果が生じるわけではありません。実際問題、客観的に見る限り、このテントの所有権が放棄されている、ということはないでしょう。

 

さらに、要請書には、「米軍や工事用車両等の通行を妨げています」とありますが、テントは上記車両よりさらに脇によっており、客観的に見る限り、何らの通行も妨げていないように思われます。

 

いずれにしても、道路管理者である沖縄県が、書面注意を近い時点で行っており、その推移を見守っている段階で、沖縄県以外の者が、これを撤去したりすることは許されないでしょう。

 

 

なお、これは普段の法律相談でもあるのですが、変な物を放置されたら、勝手にどかして良いのか、という一般的な問題があります。例えば自宅の庭に壊れた自転車などを放置された場合などが典型例です。この場合、正直窮屈なのですが、勝手にどかしてはならないと言われています。所有権等に基づいて、妨害排除といってどかしてもらう権利があったとしても、その権利を行使するときは裁判所を通さなければなりません。

これを「自力救済」の禁止といって、法社会秩序を保つための考え方です。

 

例えば、AさんがBさんに40万円を貸していたとします。期限になってもBさんがお金を返さなかったとしても、Bさんの財布から勝手にお金をとれば、それは窃盗罪です。もちろん、AさんがBさんに40万円を返せと裁判外で請求することはできますが、Bさんが払わない以上裁判を提起して、判決をとって、差押え等をしなければならず、そこにBさんの財布があっても勝手にとってはいけない、ということです。

少し想像していただければわかりますが、自力救済を認めた場合、社会の秩序は著しく乱れてしまいます。

よって、上記の自転車を放置された場合でも、勝手にどけてはいけないし、まして、「所有権が放棄されたとみなした」と豪語して廃棄してはいけません。それをすれば「器物損壊」で逮捕されることもあるでしょう。

 

以上のとおりですので、正直私が調べた限りでは、沖縄防衛局や外務省や海兵隊が、裁判等の手続をとらずに、勝手にテントを撤去する権利はないように思いますし、もし勝手にやったら、その態様によっては器物損壊罪にあたることもあるでしょう。

 

如何にそこに大義名分があったとしても、とるべき手続を踏まない限り権利は行使できないし、手続きを飛ばして行使すれば違法になることがあるということです。

 

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