南山法律事務所
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コラム
2018.01.15
コラム

大好きなドラマ「99.9」のセカンドシーズンが始まりました。

 

ドラマとして面白のはもちろん、細部の作り込みへのこだわりが、刑事弁護に携わる弁護士からみてもすごい作品だったので続編に期待していました。

結論から言えば、セカンドシーズンも期待通り、いや期待以上でした。弁護士目線で少し解説してみます。

 

1 アプローチがリアル

深山弁護士(松本潤さん)の調査は、無罪という結論を導く合理的な説明(ケースセオリー)探しから始まります。最初に深山弁護士がしたのは被告人から話を聞くことであり、次にしたのは手元にあった証拠を一つひとつ確認することでした。

実際の弁護活動でも、最初に弁護人の手元にあるのは、「被告人から聞ける話」と「検察官から開示された証拠」の2つだけです。
※その他の証拠が途中から出てきますが、その前に「検察官への証拠開示請求」がしっかり描かれているのもリアルです。

そして、この2つのうち、まず被告人から話を聞く方から行うことが多いです。これは、先入観を持たずに、そして被告人の目線から証拠を見るために弁護人がするアプローチです。

 

元裁判官という設定の尾崎弁護士(木村文乃さん)に対し、深山弁護士が「裁判官は最初から有罪を前提として証拠を見ていると」批判する場面がありました。実際も刑事弁護をしていると、裁判官に対してそう感じることは多いです。

 

 

 

 

2 法廷でのやりとりがリアル

さて、99.9の凄いところは、「こんなところを細かく描いても法曹三者以外には伝わらない」とツッコミたくなるようなところまで、細かく作り込まれているところです。だからこそ伝わってくる臨場感でしょうし、その細部を、視聴者の方に伝えたいからこそコラムを書いているわけです。

例えば、法廷における深山弁護士の発言や動作の一つひとつが非常にリアルに描かれています。ここまでしっかりされているドラマはほとんどありません。

 

例えば、「ホヤぼーや」と一緒に写っていたOLに対する反対尋問の場面で、深山弁護士は「証言を明確化するため」と告げてから写真を示しています。
他方、男性従業員(真犯人)に対する反対尋問の場面で深山弁護士は「記憶喚起のため」と告げて録音データを再生しています。セリフの違いには理由があります。

 

OLへの写真掲示は刑事訴訟法199条の12に基づく提示で、男性従業員への音声データは刑事訴訟法199条の11に基づくものだからです。

(記憶喚起のための書面等の提示)
199条の11 訴訟関係人は、証人の記憶が明らかでない事項についてその記憶を喚起するため必要があるときは、裁判長の許可を受けて、書面(供述を録取した書面を除く。)又は物を示して尋問することができる。

(図面等の利用)
199条の12 訴訟関係人は、証人の供述を明確にするため必要があるときは、裁判長の許可を受けて、図面、写真、模型、装置等を利用して尋問することができる。

 

 

この違いを忠実に描くために、わざわざ深山弁護士のセリフを変えているわけです。

 

第1話のハイライトは、深山弁護士が、証人による証言が信用できないこと、平たく言うと嘘であることを示す場面でした(こういった行為を法律用語では「弾劾」といいます)。

 

このステップが非常にリアルでした。深山弁護士は、まず嘘を話させています。そして、嘘を話させた上で「間違いありませんか?」と毎回念押しをして、「間違いありません」と言わせています。

これは、アメリカの法廷弁護技術NITAでも教わる、弾劾(その証拠が信用できないことを示すこと)のための重要なステップです。念押しすることで、「言い間違えた」等のいいわけを先回りして封じているわけです。

 

 

そして、いざ信用できないことを裁判官・裁判員に示す場面で、深山弁護士は弁護人席を離れて、証人の真横、つまり裁判員から見える位置に移動しました。これもリアルです。

移動という動作を見せ「時間」もつくることで、裁判官と裁判員に対し、場面の変化を空気として見せ、証言台の横に移動することで注目を自分(弁護人)に集めるわけです。これは、「ドラムを鳴らせ」とも表される法廷弁護技術のテクニックの一つです(ダラララララ、ダン!というドラムです)。

このように弁護人が動くことで、裁判官と裁判員に、「ここからが見せ場ですよ」「よく覚えて下さいね」と伝え、それを見せることで、記憶に残りやすくしているわけです。

法廷弁護技術の研修用ビデオかとツッコミたくなるぐらいリアルで、そのリアルさを損なわない限度で笑いを挟んでいるのが絶妙です。
※実際も、パソコン操作に慣れていない弁護人は結構いて、再生までに時間がかかることがあります(笑)

 

 

3 法曹三者の描き方がリアル

法曹三者(裁判官、検事、弁護士)の描き方もリアルです。尾崎(木村文乃さん)の設定が元裁判官であることからもわかるように、恐らくセカンドシーズンで描きたい部分の一つが、法曹三者の刑事裁判における違いなのだと思います(裁判官への批判的メッセージ?)。

 

例えば、元裁判官の尾崎弁護士(木村文乃さん)は、手元にある証拠(書面)だけ分析し、最初から被告人=犯人だという結論を出し、その結論に「どっぷり」つかっています。

親友のお父さんであるにもかかわれらず、「間違いなく殺人犯だ」と思うぐらいにです。いかにも、元裁判官らしい思考です。

他方、深山は、まずは被告人から話を聞こうとしています。そして、証拠の一つひとつに疑問の目を向け、一つひとつをそのとおりに受け止めてよいかを愚直に確かめるという行動をとっています。そして、それが済むまでは真実は何もわかっていないと考えています。さすが腕利き刑事弁護人という感じですし、弁護士としてもハッとさせられる姿勢です。

 

 

また、法廷での法曹三者のやりとりもリアルです。

例えば、深山が法廷で、噴水の音が入った動画を出そうとする部分がそうです。普通の裁判ドラマでは、何のやりとりもなく「切り札」となる証拠が「後出し」されていますが、実際の裁判では、そんなことはできません。必ず異議が出ます。

検察官から「事前に請求されていない」「関連性が不明だ」と二つの異議を述べられていたのがその場面です。この異議に対し、深山弁護士は、礼儀を尽くし事前に出せなかったことを詫びた上で、「事前に請求できなかった理由」と「重要な証拠であり今証人に示す必要がある」ことを述べています。
※発言の信用性を損なわないために、法廷では「紳士」であれという教えにも沿った行動です。

 

これを受けて裁判官が、異議の裁定を頭の中でした上で、「まずは検察官に開示を」と対応している場面も非常にリアルです。これらのやりとりは、いずれも刑事訴訟法と刑事訴訟規則に準拠したもので、一つひとつのセリフの言い回しが、法律に基づくものになっていました。

ここまでリアルにやっても、法曹三者以外の視聴者には全く伝わらないだろうに、、、さすがです。細部の作り込みが、法廷の場面における緊張感に繋がっているのだと思います。

 

ちなみに、最後のテロップの中に、著名な刑事弁護人であり、法廷弁護技術の著名な講師でもある高野隆弁護士のお名前がありました。2話目以降もリアルなやりとりが描かれると思います。

 

もちろん、一つの事件にここまでの時間と労力をかけられるか、、、というところや、画像処理のところなどは、ドラマならではだと感じますが、以上のとおり99.9はセカンドシーズンも期待できそうです。

 

 

 

4 プロレスと被災地への愛

他にも、ちりばめられた「細かいプロレスネタ」も健在でした。まさか、実際に新日本プロレスの公式HPでコラムを書いているアジアン馬場園さんをパラリーガル(弁護士の秘書)に起用するなんて(笑)。プロレスファンのハートも鷲掴みです。

 

東日本大震災の被災地である気仙沼市のゆるキャラである「ホヤぼーや」を起用するところも心憎いと感じました。熊本大分関連の商品もたくさん出てきていましたね。

ドラマのクール中に3月11日を迎えるからか、被災地への愛も感じました。

2018.01.01
お知らせ

新春のお慶びを申し上げます。

 

お陰様で、当事務所は今年4月で設立3年目を迎えることとなります。

この日を迎えられるのも、ひとえに皆様のご協力とご支援があってこその賜と感謝しております。

 

2018年は戌年です。
戌には「勤勉で努力」という意味があるとのことです。
初心を忘れること無く、それぞれの案件にしっかり向き合い、

「一歩一歩」確実に歩んでいきたいと存じます。

 

本年も、よりいっそうのご支援、お引き立てを賜りますようお願い申し上げます。

 

 

平成三十年元日

2017.12.26
お知らせ

当事務所弁護士小口幸人の活動を報告致します。

 

先日12月12日、八重瀬町教育委員会のお声かけにより、キャリア教育の授業に参加させていただきました。

授業は、4年生から6年生の児童約30名がいくつかのグループを作り、今回招かれた“仕事の達人”(新聞記者や警察官、消防士、陶芸家、介護福祉士、お笑い芸人、大学講師など)にインタビューをする形式で進行されました。

 

弁護士小口は、弁護士の仕事内容、役割を説明したほか、「弁護士になって良かったことは?」「弁護士をしていて辛かったことは?」など、児童らから直球な質問を投げつけられたそうです。

 

後日いただいた児童らの感想をいくつかご紹介致します。

【感想】

・自分がなりたい職業が増えました。(略)弁護士は、人とのつながりもあるし、人を助けたりすることが仕事といっていて、人も助けたいなぁと思いました。

・弁護士のバッチは小さいけど「キラキラしていてカッコイイな」と思いました。

・弁ご士の方は、ほうりつを使って弁ごをしているので、大変なお仕事だと思いました。

***

 

児童たちはきっとこれから沢山の出会い、経験を重ねて成長していくこととなります。

一つひとつの出会い、経験を大切に、それぞれの夢の種を大きく育てていってほしいなと思います。

 

《事務局》

 

 

 

2017.12.21
お知らせ

本年も残すところあと僅かとなりました。

皆様には格別のご愛顧を賜り厚く御礼申し上げます。

 

誠に勝手ではございますが、12月29日~1月3日までの間、

業務をお休みさせていただきます。

新年は1月4日から業務開始となりますので、宜しくお願い申し上げます。

2017.12.13
コラム

『9条に自衛隊 問題点を指摘』『那覇、小口幸人弁護士が講演』

【2017年11月22日 琉球新報23面】

 

当事務所弁護士小口幸人の活動が新聞記事に掲載されました。

 

先日11月19日、11.19連帯の集い実行委員会主催の「安倍首相が示した憲法9条に自衛隊を明記する案に反対する集会」が開かれ、弁護士小口幸人が招かれました。

講演の中で弁護士口は憲法改正についての内容と問題点を述べ、「今の状態で自衛隊を明記する」ことの危険性について指摘しました。

憲法改正はこれからの日本、将来の社会を創り上げるものです。

 

つい先日も、自民党憲法改正推進本部より「教育無償化」については改憲たたき台として「無償」との表記を明記しない案が提示されました。

私たちは、未来の子ども達へ何を残せるでしょうか。数十年後の子ども達をどのように守れるでしょうか。

 

憲法改正と一言にいっても、考えるテーマは多岐に渡っています。

その一つひと

つを、将来の私たち、子ども達のために「今」考えていかなければならないと改めて感じました。

≪事務局≫

 

 

2017.12.09
お知らせ

1月22日(月)に、東京で開催されるイベントに登壇することになりました。

主催は明日の自由を守る若手弁護士の会(通称:あすわか)で、メインパーソナリティーは報道ステーション等でおなじみ、首都大学東京の木村草太先生です。

当日は、木村先生の前座として、「ビギナーのためのイマドキの「おきなわ」」についてお話しをさせていただきます。
すぐ後に、木村草太先生が「憲法改正」についてお話しをされるというせっかくの機会ですので、憲法9条と在日米軍の関係、そしてイマドキの憲法9条改正の欺瞞についても触れたいと思います。

東京での講演となりますが、知人の方等にお知らせ頂ければ幸いです。

2017.12.03
コラム

12月2日の以下の記事に沖縄タイムスに、弁護士小口幸人のコメントが掲載されました。

路上寝3度で検挙/豊見城署方針/事件・事故の防止狙う
http://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/178226

 

 

紙面の都合だと思いますが、記者に指摘したことがほとんど掲載させていませんでしたので、すこし補足させていただきます。基本的に、沖縄県警豊見城署がしようとしていることは「違法」であり、考え方自体に「重大な問題」があると言わざるを得ません。
(記者から聞いた点も合わせて書きます)

 

1 問題の概要

2017年1月~11月までの間に、酒に酔って縁石を枕に県道に足を投げ出して眠るなどの路上寝が68件確認されたそうです。「泥酔者を自宅に送る」「家族に連絡」「署で保護」などの対応に警察官が拘束され、その間、他の事件・事故の対応ができないので、沖縄県警察豊見城署は、2017年1月から「路上寝警告書」なるものを交付しているんだそうです。

そして、「路上寝警告書」を3回以上渡されたら検挙の可能性があり、逮捕するかどうかは反省の有無など「ケースバイケース」で決めるとのことです。検挙・逮捕には、道路交通法の罰金5万円以下(道交法76条4項違反)を適用するそうです。

 

 

 

2 違法の疑い

道路交通法は、「道路における危険を防止し、その他交通の安全と円滑を図り、及び道路の交通に起因する障害の防止に資することを目的」につくられています。酔っ払い対策が目的ではありません。

そして、76条4項1号は「道路において、酒に酔つて交通の妨害となるような程度にふらつくこと」をしてはならないと定め、2号は「道路において、交通の妨害となるような方法で寝そべり、すわり、しやがみ、又は立ちどまつていること」をしてはならないと定めています。いずれも最大罰金5万円の罪です。

 

この記事が想定している、「酒に酔って道路で寝る」行為はそもそも処罰の対象になっていません。なぜなら、そもそも道路交通法は、酔っ払い対策の法律ではないからです。

76条4項1合は、酔っ払ってふらつく場合だけですから、寝ているケースに適用することはできません。

76条4項2号は、交通の妨害となるような方法で寝そべることを禁じていますが、あくまでも「交通の妨害となるような方法」の場合だけです。そして、「交通の妨害となる方法」について、警察が実務の参考にしている「執務資料 道路交通法解説」は要旨、次の様に記しています。

 

「交通の妨害となるような方法」とは、寝そべる行為が交通の妨害となるおそれがあるような方法のことであり、交通の状況、道路の場所等との対比において判断される。したがって、例えば昼間は雑踏するが夜間は人通りの絶える歩道の端において寝ていても交通の妨害となるような方法で寝そべったことにはならない。歩道の中央に寝そべっている場合、歩行者の通行の可能性がある限りは交通の妨害となるような方法で寝そべったということになる。」

 

今回の件の対象は、深夜、酒に酔って道路で寝てしまっている人です。多いのは、道路沿いの建物を背もたれにして寝ていたり、道路の隅っこ建物や縁石沿いに寝ている場合でしょう。
酔っ払いの道路寝のうち、76条4項2号で該当するのは、その寝方が、交通の状況や道路の場所と照らし合わせて交通の妨害となるような場合だけです。さらに、全ての犯罪には原則として「故意」が必要ですから、本人が、その寝方が交通の妨害となるような方法であることを認識した上で寝た必要があります。

例えば、自宅だと勘違いして寝た場合などは、罪に問えないでしょう。

 

そうすると、酔っ払いの路上寝のうち、76条4項2号に該当するのはほんの一部でしかありません。それにもかかわらず、路上寝をしている人に「路上寝警告書」なるものを交付し、それが3回以上になったら検挙するなどとするのは、違法となる可能性が高い行為と言うほかありません。

 

 

 

3 根本的な間違い

警察は、法律に基づいて法を執行する機関です。今回の件は、警察官が酒に酔っている人にどう対応するか、特に車にひかれそうな形で寝ている場合にどう対応するかが問われています。
そうすると、参照すべき法律は道路交通法ではなく、「酒に酔つて公衆に迷惑をかける行為の防止等に関する法律」です。

なぜなら、同法の目的は、「酒に酔つている者の行為を規制し、又は救護を要する酩酊めいてい者を保護する等の措置を講ずることによつて、過度の飲酒が個人的及び社会的に及ぼす害悪を防止し、もつて公共の福祉に寄与すること」だからです。

同法3条は、警察官に対し、「酩酊めいてい者が、道路、公園、駅、興行場、飲食店その他の公共の場所又は汽車、電車、乗合自動車、船舶、航空機その他の公共の乗物において、粗野又は乱暴な言動をしている場合において、当該酩酊めいてい者の言動、その酔いの程度及び周囲の状況等に照らして、本人のため、応急の救護を要すると信ずるに足りる相当の理由があると認められるときは、とりあえず救護施設、警察署等の保護するのに適当な場所に、これを保護しなければならない」として、酔っ払いの保護義務を課しています。

 

恐らく、沖縄県警豊見城署の警察官は、自分達がこれまでしてきた、「泥酔者を自宅に送る」「家族に連絡」「署で保護」という行為が、同法3条に基づく義務の履行であることを自覚していないのだと思いますが、警察が、ときに酔っ払いの意図を反してでも一時保護ができているのは、法律が警察に権限を与えているからです。

よって、もし、酔っ払い対策のために、上記のような保護では足りず、新たな対策が必要ならば、警察庁から同法の改正を法務相にあげてもらい、法律を改正し、正に、酔っ払って路上で寝る行為に対し罰則を科せるようにするのが法治国家のあるべき姿です。

 

ただ「忙しい」からという理由で、何とか制裁を科して止めさせようと思い、検挙の口実にできそうな法律を探し、道路交通法の罰金5万円以下の罪をもちいて懲らしめてやるなどというのは、法の濫用であり、率直に姑息でセンスが悪いと言わざるを得ません。

法律は、その目的と趣旨を考慮して、法が定める目的を果たすために使わなければならないという、「いろはの「い」」を忘れている現れです。

 

 

 

4 重大な間違い

この記事に現れている最大の問題は、警察官が記者に対し、逮捕するかどうかは「反省の有無」等で決めると答えていることです。これは重大な問題発言です。

警察は、人を反省させる機関ではありません。それは警察の役割ではありません。警察の責務は「警察は、個人の生命、身体及び財産の保護に任じ、犯罪の予防、鎮圧及び捜査、被疑者の逮捕、交通の取締その他公共の安全と秩序の維持に当ること」(警察法2条)です。

 

そして、警察が逮捕するには、最低限、次の2つの要件が満たされていなければなりません。

ア 被疑者が罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があること
イ 被疑者が逃亡するおそれがある 又は 罪証を隠滅するおそれがあること

 

酔っ払いの路上寝の場合、寝ているところを警察官が現認しているわけですから、証拠を隠滅する術がありません。よって、罪証隠滅の恐れはありません。また、どんなに悪質で何百回と繰り返しても上限罰金5万円なのですから、仕事や生活をすてて逃亡する恐れもありません。
よって、どう見ても、上記イが充たされないので、逮捕などできないし、できないのにしたら違法(逮捕罪という犯罪)です。

このように、酔っ払いの路上寝のうち、交通を妨害する方法で行われている場合があったとしても、逮捕の要件は充たされないのですから、逮捕しようと考えていること自体がまず問題です。

 

そして、沖縄県警察豊見城署は、「反省の有無」という逮捕の要件ではないことを重視して、逮捕するかしないかを決めようとしているのですから、更に問題です。

上記のとおり、反省の有無は、逮捕の要件ではありません。せいぜい、反省している場合は証拠隠滅しなくなりそうという程度のかかわりしかありません。しかし、そもそも路上寝自体を現認されており、証拠を隠滅する術がないのですから、今回は関係ありません。

 

それにもかかわらず、警察官が堂々と、反省していたら逮捕しないが、反省しないなら逮捕するかというように、記者に対して答えているのですから、事態は深刻です。

逮捕の要件という法律を横において、まるで自分が裁判官にでもなったかのように、人が反省しているかどうかを見極めて、反省していないなら制裁を科すというように思考している警察官がいる、しかも恐らくこれは氷山の一角ということです。

刑事司法手続きにおいて、警察官は、裁判に必要な捜査を行い、要件が充たされ令状が発布されたら逮捕し、裁判所の決定に従って身体を拘束する機関でしかありません。

そして、逮捕という手続きは、上記の要件が充たされるときに、証拠隠滅を防いで捜査を行い逃亡を防止するために最大72時間拘束できる手続きにすぎず、決してそれ自体「罰」ではないのに、逮捕を、人に対する「制裁」のようにとらえ、「懲らしめる」ために警察の一存で科そうという考えが根っこにあるのですから、そのような警察官は、警察の何たるかを根本的にはき違えていると言わざるを得ません。

 

 

 

 

5 他の場面でも見えた、警察の役割のはき違え

沖縄県警が、自らの使命をはき違えていることが顕在化したケースとしては、以下の「排ガス嫌なら抗議やめろ」という、沖縄県議会における警察部長の答弁があります。

=掲載情報=『「排ガス嫌なら抗議やめろ」警備部長 辺野古の排除対策容認』

仮に、違法な行為をしている人がいたとしても、警察には「罰」を加える権限はありません。そんなことを法律は許していません。

「逮捕」という、別の目的の行為を「制裁」として用いることは論外ですし、上記のように、「排ガスを吸わせる」という行為をするのも論外です。

 

 

 

6 警察は法律に従って行動することにこそ価値がある

冒頭の酔っ払いの路上寝など、警察官が多忙なのはわかります(もっとも事件は減り、警察官は増えているのですが)。しかし、警察官の核心的な価値は、法律に基づいて法を執行することにあります。

このことは、頭の体操をしてみるとわかります。

目的のために必要なら有形力(腕力)も使う、大人数で組織されている、上命下達で上司の命令が絶対、武器ももっている、日頃から身体を鍛えている、さてこのような特徴をもつ組織と言えば何でしょうか?

答えは、警察と暴力団です。

 

しかし、警察と暴力団には大きな違いがあります。それは、警察は法律に基づいて行動しており、暴力団は法を犯しがちだということです。

もし、警察が法律に基づかずに有形力を使う組織になり下がるなら、世の中は暗黒です。なぜなら、警察を取り締まる実力組織は存在しないからです。私は、警察官になるような人は、正しいことをしたくて警察官になっているのだと思います。彼らには彼らなりの正義があることもわかります。

 

しかし、法律がそのような行為を許しているかどうか、そんな権限があるかどうかを謙虚に顧みなくなったら、警察と暴力団は五十歩百歩になってしまいます。
警察官の方々を尊敬しているからこそ、そのような警察は見たくありません。ぜひ沖縄県警には、そもそも警察の使命は何なのか、警察官にできることは何なのか、初心に立ち返ってもらいたいと思います。

2017.11.29
お知らせ

『基地問題 国民議論にー全国青年司法書士協 辺野古阻止へ声明―』

【2017年11月19日 琉球新報25面】

 

当事務所弁護士小口幸人の活動が新聞記事に掲載されました。

 

本年2月に、全国青年司法書士協議会(全青司)より「辺野古新基地建設工事を中止し全国の自治体を等しく候補地として国民全体で議論を深めるべきこと、並びに、普天間飛行場の移設先の決定につき日本国憲法に則り立法措置と住民投票を求める会長声明」が発出されました。

先日11月17日のシンポジウムでは、この問題意識を柱として、世論の関心を高める方策が話し合われ、弁護士小口が登壇しました。

 

シンポジウムの中で弁護士小口は、基地問題にかかる情報量が県内外では圧倒的に差があることについて、実体験をもとに話をしました。

その他、ノンフィクションライターの渡瀬夏彦さんが招かれ、いかにして基地問題を国民全体の問題として伝えることが出来るか問題提起をし、またパネルディスカンション等も行われました。

 

普段、沖縄県内で生活をしていると、毎日のように基地問題に関する情報が目や耳から入ってくるため、県外でどのように取扱いがされているのか、どのような報道がされているのか、意識することはありません。

これを機に、「沖縄」の問題を「全国」の問題として考える、考えさせるために私たちに出来ることを考えてみたいと思います。

 

《事務局》

 

2017.11.23
コラム

11月17日に、那覇市おもろまちで、沖縄米軍基地問題を考えるシンポジウムにおいて講演とパネリストを務めてきました。

このイベントは、全国2,700人を超える司法書士で構成される全国青年司法書士協議会のイベントで、当日は、同協議会の広瀬隆会長はもちろん、沖縄、そして全国から司法書士の先生方や、市民の方が集まりました。

沖縄で、ヤマトンチュの私が米軍基地問題の話をするのは、これ以上ないほど恐縮なのですが、当日は、米軍基地の沖縄への集中に合理的な理由がないことや、国と沖縄県の対立の本質などについて話をさせていただきました。

余りに根が深く本当に難しい問題ですが、だからこそ、わかりやすく多くの方に知っておくことが大切なのだと思っています。わかりやすく話すことは、どうやら得意なようですので、今後もご依頼をいただいた際には、しっかり話をしていきたいと思います。

 

2017.11.14
コラム

11月11日に大阪弁護士会館で行われた、災害対策連続講座(主催:近畿弁護士会連合会)で講師を務めてきました。

 

近畿弁護士会連合会は、近畿圏の6弁護士会で構成された団体ですが、当日は四国圏の弁護士会とも映像をつなげる形で実施されました。

 

私からは、被災者が被災後に受け取る支援の中心である、被災者生活再建支援金と災害弔慰金について、その制度の概要、問題点、その改善提案などの話をさせていただきました。

 

沖縄県民のみなさまには、なかなか被災者の権利などについては縁遠いかもしれませんが、いつ大きな地震や津波が起きてもおかしくない状態であることは確かです。

沖縄でも、災害法制についてお話しする機会をいただければと常々考えておりますので、そういった講演のご依頼等もいただければ幸いです。