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コラム
2023.08.10
被災者・被災地支援

この度の台風6号により、お怪我をされた方、被害に遭われた方におかれましては、お見舞いを申し上げます。また、お亡くなりになられた方には心よりご冥福をお祈り申し上げます。

 


1 住家被害


住家の被害を受けた場合、ア保険、イ公的支援、ウ住宅ローン関係の三つを考える必要があります。

その上で、どの関係でも必要となるのが、「片付け」と「り災証明」の申請です。

こちらの資料が大変充実していますので紹介させていただきます。参考にしてください。

■「水害にあったときに(浸水被害からの生活再建の手引き)」(震災がつなぐ全国ネットワーク編)

https://shintsuna.org/img/tools/suigai_leaflet_2306.pdf

 

住家被害を受けた場合は、どの場面でも「り災証明」が必要になってきます。

まずは最寄りの役場でり災証明の申請をしましょう。

 

ア 保険

既に動かれている方も多いと思いますが、火災保険等を活用する場面です。

保険会社は「台風6号により被害を受けられた方へ」といった特設サイトを設けています。

何らかの被害が発生していた場合は、まずは問い合わせてみましょう。

また、保険料の支払いについても、延期等を受けられることがありますので、保険会社にお問い合わせください。もし、保険会社の被害認定に納得がいかない場合は、ぜひ、当事務所にご相談ください。

 

イ 公的支援

り災証明書で半壊以上の認定を受けた場合、国の制度である応急修理制度を利用でき、最大65.5万円(令和4年基準)の補助を受けられます。

大切なのは、修理等をした後問い合わせではなく、修理等をする前に最寄りの自治体に問い合わせ、補助金をちゃんと受けられるよう手続きをすることです(なお、半壊以上の被害を受けた場合、災害復興住宅融資等、各種有利な融資制度も利用できます。)。

もしうまくいかない時には、どうぞ当事務所にご相談ください。

その他、地方自治体の判断によっては、今後も含めて、自治体独自の支援を受けられるようになることもあります。他の災害では、見舞金等、様々な例があります。

 

ウ 住宅ローン

台風6号の影響で住宅ローンの返済が滞りそうな場合、金融機関に相談することで、返済方法の変更等を受けられることがあります(なお、県内金融機関は、被災された方を対象にした特別な融資制度を設けたようです)。

これを超えて、そもそも返済困難、近い将来に返済不能になりそうという状況の場合、被災ローン減免制度(自然災害債務整理ガイドライン)という特別な制度を利用できる可能性がありますので、下記3をご覧ください。

 


2 車の被害


最近は自動車保険といっても、商品の内容が様々なので一概に言い切れないのですが、基本的には、車両保険を付帯している場合は、自然災害による被害について、保険の支払いを受けられることがあります。

車両保険を付けている方は、保険会社にお問い合わせください。

 


3 支払い関係(債務整理)


台風6号の影響で、借金の返済等をすることができない、または、近い将来返済できなくなる場合は、被災ローン減免制度(自然災害債務整理ガイドライン)を利用できます。

弁護士費用無料で、ブラックリストにも載らず、破産等より有利な条件で債務の減免が受けられるという被災者にとって有利な制度です。

利用方法は、最大債権者から同意書をもらい、沖縄弁護士会の窓口で申請するという方法です。

他方で、周知が十分でない制度でもあります。県内金融機関窓口でさえ、適切な案内を受けられないことがあると思われます。

詳しく知りたい、利用しようとしたが債権者から使えないと言われたなど、お困りの場合は、何なりと当事務所までご相談ください。

 


4 風で壊れた(相隣関係等)


今回の台風6号では、非常に強い風が吹いたため、風で壊れた、風で飛んできたもので壊れた、風で倒れて壊れたなど、様々な被害が発生しています。

また、台風の影響で傾いているが、そのまま放置されて心配など、様々なトラブルが現存しているのではないかと想像しています。

被害について、火災保険の適用が受けられ、被害全額分の支払いを受けられて解決するのであればよいのですが、そうならないこともあると思われます。

誰かが台風対策をしっかりしていなかったから風で飛んで、そのせいで被害を受けた場合など、被害分の損害賠償請求が可能になることもありますので、お困りの場合は、どうぞ当事務所までご相談ください。

 


5 自治体関係のみなさまへ


り災証明の運用や、内閣府防災とのやりとり、災害救助法の運用や、応急修理制度の運用など、各種対応について、困難に直面されているのではないかと想像しています。

手前みそですが、沖縄県内で、もっとも災害関連に詳しい法律家は当事務所の弁護士小口です。内閣府防災に言われたがどうしようもないのかなど、様々なご相談に応じることも可能ですので、遠慮なくお問い合わせください。

災害救助の場面では、自治体がどれだけの知識をもっているかで、被災者が受けられる支援は変わります。ダメといっていた内閣府防災が、過去の例や理由付け等を変えることで対応を変えることも十分にあり得ますので、うまくいかない時には、どうぞご相談ください。

 

 

(弁護士 小口幸人)

2022.03.11
コラム

『「災害関連死には500万円を支給」遺族に手篤い災害弔慰金が、むしろ遺族を傷つけてしまう理由-本来の趣旨とはかけ離れた運用-』

【2022年3月9日(水) PRESIDENT Online】

 

東日本大震災後、岩手県にて災害関連死の審査委員として100件以上の災害関連死の審査に携わってきた当事務所の弁護士小口幸人が、先日取材を受け、その記事が掲載されましたので報告致します。

 

「災害関連死」とは、災害弔慰金の支給等に関する法律において、災害と死の間に法律上の相当因果関係が認められるケースを指します。例えば、被災後に通院することが出来ず、持病やケガが悪化し亡くなったり、避難所で感染症にかかって命を落としたり、家族を失ったショックで精神疾患等を患い自殺に至ったケースなど、かなり様々です。

ただ、ケースは様々であっても、死に至ったケースそれぞれが、現在の制度が及ばなかった結果。制度の穴を埋めるためには、災害関連死ひとつひとつに、「どうしたら救えたのか」を検証し、教訓としていくことで、制度改善へと繋げることが何よりの弔いになると、小口は考えます。

 

その上で、小口は記事の中で、

  災害関連死を検証し、教訓として制度改善に活かそうという視点が、現在の運用には決定的に

  欠けている

と指摘します。

 

昨年、東日本大震災の発生から10年を迎えた頃。

3.11の被災自治体のいくつかで、審査会の議事録など、災害関連死に関わる資料が廃棄されているとの報道がありました。この報道に触れての上記コメントです。

 

また、弔慰金が一律500万円または250万円である現在の制度について、記事の中で小口はこう提案します。

 

  関連性の程度に応じて弔慰金の額を調整出来るような制度にすることも一案なのだろうと思い

  ます。(中略)関連死に認定されなかった遺族と、認定された遺族が狭いコミュニティの中に共

  存しうる今の状況を合わせ考えると、弔慰金の額を関連性の程度に合わせて調整できる方法に

  することは、あり得る選択肢だと思います。

 

近い将来、大きな災害が起きると言われています。

そうでなくても、自然災害は繰り返され、今後も必ず発生します。

ここ沖縄でいうと、年々台風での被害が拡大傾向にあり、また大雨による被害も毎年起こっています。

県内自治体では、地域計画防災が練られていますが、残念なことにいくつかの自治体では、数年前に策定された以降、見直しや改定等がなされていない状況もあります。

 

どうしたらよかっただろうか。

どうしたら一人でも多くの命が助かるだろうか。救えるだろうか。

こう思いを馳せること、検証することは災害関連死の審査に関わらず、広く私たちの生活に言えることであり、そして行政に限らず、私たちも、毎日の生活の中で繰り返し考えなければならないことだと思います。

 

ひとつひとつの命、一つ一つの災害、事象、事故、事件で、繰り返し繰り返し制度を見直し、改善していく。

そして、安心した未来を子ども達に繋げていくことが、現在を生きる私たちの「すべきこと」であると考えます。

 

 

 

《事務局》

2021.09.08
コラム

『長野市豊野の男性 災害関連死不認定』『遺族「詳しい説明を」』

【2021年8月28日 信濃毎日新聞35面】

 

先日8月28日、長野市豊野の男性について、災害関連死が認められず、さらに詳しい説明がなされないままになっている件に関して、弁護士小口のコメントが掲載されましたので報告致します。

 

男性は、2019年10月の台風19号の災害時、高齢者施設で救助され、長野市外の病院に転院。さらに約2週間後、長野市内の別の病院に入院し、その後12月にお亡くなりになりました。遺族が災害関連死の認定制度があることを知り、長野市に災害弔慰金を申請したところ、遺族の元に長野市から届いた不認定通知書は、A4版1枚で、理由はたったの5行でした。

 

長野市は、災害関連死の認定基準について、避難所暮らしなどの生活環境や医療・介護環境が激変したことが原因で、病気が発症・悪化した場合に災害と相当な因果関係があると規定しています。

また、台風19号災害で災害関連死と認められた方々の中には、入所施設が被災し、転院を繰り返した事で体力が低下して死亡した方や、入所中に被災し、持病の薬が飲めない期間があり、施設を移った事による体力の低下の影響もあって死亡した方がいます。

その上で、たった2カ月の間に入院先を2度も変わらざるを得なかったこの男性は、災害関連死とは認められなかったとのことです。

 

2度も生活環境が変わり、心身ともにとても負荷がかかっていたはずなのに・・・不認定について、遺族の「なぜ?」が取り払われないのも無理のない事だと想像できます。

 

遺族は長野市に対して、亡くなった家族の不認定と、認定された事例との違いについても説明を求めますが、市は「災害との関連はない」を繰り返すだけだったと言います。

 

弁護士小口は「なぜ災害と関連がないか説明が不十分ではないか」と指摘し、さらに東日本大震災後、岩手県山田町の災害関連死認定に関わった経験を踏まえて「遺族にとって死因と災害との関連は重大な関心事。市の説明に納得できなければ先に進むこともできない」とコメントを寄せております。

 

突然失った命。

急に家族や大切な人を失った方の気持ちは計り知れません。

ただ、その命や残された方々に、寄り添ってくれる姿があるだけで救われるものがあるのではないかと思います。そうすることできっと残された方々の気持ちが、少しは片付くのではないでしょうか。

 

災害で犠牲になった命に、しっかり、丁寧に、向き合っていただきたい、そう思います。

 

《事務局》

2018.07.20
被災者・被災地支援

先日のコラム 早急に義援金禁止法制定を で求めた義援金差押禁止法が、無事成立しそうです。ひとまずよかったです。

とはいえ、このようなドタバタになったのは熊本地震後も恒久法化されなかったことが原因です。速やかに臨時国会を開き、恒久法を成立させていただき、二度と同じことが起きないようにしていただきたいです。

2018.07.15
被災者・被災地支援

平成30年西日本豪雨の被害について、義援金を出した方は多いのではないでしょうか?

 

さて、みなさんはどんな気持ちで義援金を出しましたか?

被災者の方の「生活再建」に使ってほしいと思ってではないでしょうか。私もそうです。

 

しかし、このままでは義援金のかなりの部分が、

「地震で壊れた家の震災前のローンの返済」に充てられてしまうことになります。

 

これを避けるためには、東日本大震災のときのように、義援金差押禁止法の立法が必要です(東日本大震災関連義援金に係る差押禁止等に関する法律)。少し細かい話になりますが説明します。

 

まず、破産について定めた破産法という法律があります。破産法は、34条3項2号で、仮に破産をしたとしても「差押禁止財産」は手元に残して生活再建に使える、手元に残せると定めています。よって、義援金差押禁止法ができると、仮に被災者の方が破産したとしても、義援金を手元に残して生活再建に使うことがで
きるようになります。

 

そして、破産をしたときでさえ残せるわけですから、昨年12月に発表され、熊本地震で幅広く利用されることが見込まれている「被災ローン減免制度(自然災害による債務者の債務整理に関するガイドライン)」を利用して、震災前の住宅ローンの減額や免除を受けたとしても、義援金を手元に残し生活再建に充てることができるようになる、ということです(清算価値保障原則といいます)。

NHK時事口論「積極的な活用を! 被災ローンの減免制度」

 

例えば、震災で住宅が全壊等したときに受け取れる被災者生活再建支援金や、

震災でご家族が亡くなられたときに受け取れる災害弔慰金は、どちらも差押禁止財産になっています。

これと同じように、東日本大震災のときのように、義援金も差押禁止財産にされるべきです。

 

 

金融機関も被災したんだから、そんなことを定めるのはよくない、とお感じになる方もいらっしゃるかもしれません。しかし、例えば金融機関はローンを組むときに「もしものときは義援金から返済してもらおう」と考えていたでしょうか。

 

こういった視点は法律の世界では「取引の安全」に関する重要な事項だと考えられています。世の中では多くの取引がされている以上、軽はずみに後から法律をいじって、取引当事者の予想外のことをしてはならないという考え方です。

この考え方はとても大事なのですが、私は義援金を差押え禁止にしても取引の安全を害さないと思います。

なぜなら、金融機関は地震保険加入を義務づけていないし、地震保険をローン返済の担保にとってもいないからです。地震のときのことを考えたならば、地震保険加入を義務づけ、地震保険金をローン返済の担保にとっているはずです。しかし、それすらもしていない以上、義援金を返済のあてにしているはずがありません(取引の安全のためにも、義援金差押禁止法は恒久法にした方がよいと思います)。

 

以上のとおりですので、義援金差押禁止法を、政府でも超党派の議員立法でもかまわないので、早急に立法してほしいと思います。

 

【さて】実は、ここまでの部分は、以前の私の投稿のコピペです。熊本地震のときにも、全く同じ問題状況が起きたのです。そして、実際に無事指摘しました。

平成二十八年熊本地震災害関連義援金に係る差押禁止等に関する法律

 

本来であれば、こういう問題は今後の災害でも起きるわけですから、「恒久」的な法律を次の国会あたりで成立させなければならないのですが、それがされないうちに、また大きな災害が起きてしまいました。

今国会の会期はあとわずかです。大至急、上記と同様の特措法を成立させた上で、秋の臨時国会では必ず恒久法の制定をお願いしたいです。

 

2016.11.11
被災者・被災地支援

 

災害で家族を亡くした場合、遺族に弔慰金を支給するという「災害弔慰金」という制度があります。

東日本大震災のときに、災害弔慰金支給審査委員をした関係で、引き続きこの制度に注目しています。

 

災害弔慰金は一般的には「500万円」とされていますが、実際はほとんどの場合250万円しか支給されてきませんでした。昭和50年に出された通達により悪しき運用が固定化していたからです。

 

この通達による運用が、2016年5月25日の国会審議、具体的には民進党の広田一議員(高知)(当時)の質問を受けた河野太郎(自民)防災担当相の答弁により、熊本地震の分から見直されることになりました。

見直しによりどう変わったのかが少しわかりましたので、端的に報告させていただきます。

 

東日本大震災における災害弔慰金の支給件数は2万件を越えていましたが、500万円支給されたのは3827件(2015年3月末時点)わずか約19%だけでした。

熊本地震における災害弔慰金の支給件数は94件(2016年9月末)、支給総額は2億9750万円(以上独自調べ)だったので、500万円支給されたのは25件、約26%となります。

 

以上の数値から、運用見直しにより500万円支給されるケースが多少増えたことがわかります。

 

ただ、これで十分かというと、全くそういう気はしません。もっと上昇してよいはずです。

ぜひ、各地の災害弔慰金支給審査委員会と自治体は、亡くなった方が「主たる生計維持者」であったか否かを、より具体的かつ実質的に審査してほしいと思います。

 

※より詳しい関連記事はこちら

 

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2016.06.15
被災者・被災地支援

無題

 

4月24日のコラムで取り上げさせていただいた、

災害関連死・災害弔慰金の支給金額の運用見直しの件です。

 

この件が6月1日付けの内閣府通知により無事、見直されました。

 

東京の議院会館まで足を運んで取り上げていただくようお願いした者としては、これ以上嬉しいことはありません。熊本地震の災害弔慰金支給に間に合ったので、熊本地震の遺族から、新たな要件で支給されることになりました。

 

他にも、4月29日のコラムで言及させていただいた、義援金差押禁止法も、

無事成立にこぎ着けています。

 

また、5月12日のコラムで言及させていただいた、有志弁護士142名による共同緊急声明で言及した災害関連死の審査委員会設置についても、

先日の熊本県議会でとりあげられ、無事県への委託は行われず、市町村に設置、それを県が支援、という方向に進んでいます。

 

弁護士は、もちろん目の前の方のために全力を尽くす仕事です。

しかし、実はそれだけではなく、不十分な法制度の改善に努力する義務を負っています。制度を改善できれば、自分が個別救済するのとは比べものにならないほど多くの方の権利を実現、救済することができます。

今後も、災害関連を中心に、微力ながら立法活動にも取り組んでいきたいと思っています。全くお金にはなりませんが…。

 

内閣府の通知はこちら→ 災害弔慰金等の支給の取扱いについて

報道は以下のとおりです。

 

災害弔慰金 支給要件見直し

http://www3.nhk.or.jp/lnews/morioka/6043160641.html

 

内閣府は、災害で死亡した人の遺族に支給する災害弔慰金の支給要件を見直し、家計を主に支える人が死亡した場合は遺族の収入に関わらず、満額の500万円を支給することになりました。
要件の見直しは東日本大震災の遺族などが求めていたもので、熊本地震の遺族から適用されます。
災害弔慰金は、国などが災害で死亡した人の遺族に支給しているもので、死亡した人が▼家計を主に支えていた場合は500万円、▼そうでない場合は250万円が支給されます。
このうち、家計を主に支えていた人については、昭和50年の旧厚生省の通知に基づいて、遺族の年収が103万円を超える場合は半分の250万円しか、支給できないとしてきました。
東日本大震災では去年3月末までにあわせて2万件あまりの災害弔慰金が支給されましたが、500万円が支給されたのは全体の19%で、遺族や専門家が「共働きが多い現在の社会情勢を反映していない」などとして、要件の見直しを求めていました。
内閣府は、通知が出された時と社会情勢が変わったとして、6月1日付けで家計を主に支えていた人が災害で死亡した場合は、遺族の収入に関わらず、満額の500万円を支給するよう都道府県に対して、新たな通知を出しました。
この要件の見直しは、ことし4月の熊本地震の遺族から適用されます。
今回の見直しについて、岩手県陸前高田市で被災者から災害弔慰金の相談を受けている在間文康弁護士は、「東日本大震災の教訓を踏まえた判断で今後の被災者を勇気づける大きな一歩だと思う。災害弔慰金が満額、もらえないことで、遺族からは『自分が働いているがゆえに家族の命の価値が減ってしまった』という声も上がっていたので、今回の変更は非常に大きな意義があると思う」と話していました。

06月15日 17時57分

 

2016.05.28
被災者・被災地支援

熊本地震の被災地では、どこまでの方が仮設住宅に入居できるのか、という問題が起きていました。

普段は全壊の被害等を受けた方まで、となってますが、大規模災害が起きる毎に緩和されています。

 

今回もようやく、大幅に要件が緩和されました。
この件は、5月25日に国会(参議院災害対策特別委員会)でも取り上げられ、周知が行き渡っていないことが問題とされていましたので、

 

本ブログにも事務連絡を掲載して、ささやかですが周知に協力したいと思います。

熊本の被災者の方と、この事務に携わっている方に届くようご協力お願いします。

 

※事務連絡そのものは、どこにも掲載されていないようです。

PDFはこちら 280524内閣府防災事務連絡仮設入居要件緩和

 

280524内閣府防災事務連絡仮設入居要件緩和_03280524内閣府防災事務連絡仮設入居要件緩和_04

2016.05.13
被災者・被災地支援

熊本地震について、4月29日のコラムで求めた「義援金差押禁止法」の検討が、

無事国会で進んでいるようです。

 

実はこの間、永田町の国会議院会館まで足を運び、複数の国会議員に立法を求めたり、
日本弁護士連合会の熊本地震災害対策本部の中で意見したりしていたので、こういった動きに繋がって本当によかったです。

 

そうはいっても、今国会の会期は短いので気は抜けません。つつがなく進んでいただければと思っています。

 

 

(以下、民進党のHPより引用)

 

義援金差し押さえ禁止の議員立法を検討 熊本地震対策本部第5回会議(民進党HPより)

https://www.minshin.jp/article/109055

 

民進党は12日午後、熊本地震災害対策本部の第5回会議を国会内で開き、政府・与党に提案した緊急申し入れなどに対する関係府省庁の対応について説明を聞いた。

被災者に分配される義援金が金融機関などの差し押さえの対象になる可能性があることから、与党と民進党との間で差し押さえ禁止の特別措置法を検討していることも報告された。

内閣府など関係府省庁から11日までの人的・物的被害、避難の状況や物資・生活支援の状況、災害ボランティアの活動状況などについて報告があった。民進党が申し入れた「激甚災害の指定」については4月25日に閣議決定したこと、熊本震災対応の補正予算が予備費からの7000億円程度になるとの説明があった。

これらの報告に対して「熊本城の所有権が文化庁にあるのなら、国が復旧費用の全額を負担すべきではないか」「南阿蘇鉄道やJR豊肥本線の復旧支援が補正予算に入っているのか」「義援金を受け取ると生活保護が切られてしまうとの不安がある。義援金は生活保護を減額する一時所得にはならないとの線引きをすべき」などの被災地からの要請について政府に対応するよう求めた。

民進党企画広報局

 

2016.05.12
被災者・被災地支援

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本日、熊本地震の「震災関連死」について有志の弁護士142名の共同声明をとりまとめ、

内閣総理大臣・熊本県知事・熊本県内市町村長等、関係機関に送付しました。

 

昨日午後3時43分に私が呼びかけ、本日の午前10時までの約18時間で、実に141名もの弁護士に賛同いただきました。

※ご賛同いただいた先生方、本当にありがとうございました。

 

それだけ、「震災関連死」に関する問題が重要であり、この声明に過去の震災の教訓が凝縮されている、とご理解いただければ幸いです。

 

有志弁護士142名による共同声明

(声明文や賛同弁護士の一覧は上記PDFのとおりです)

 

震災関連死の審査を地元市町村で行うこと等を求める弁護士有志による緊急声明

2016年5月12日

 

第1 緊急声明の趣旨

1 被災市町村は、震災関連死の審査を県に委託するのではなく、各市町村に災害弔慰金等支給審査委員会等を設置し、自ら審査すべきである。
2 審査委員会の委員を選任する際は、弁護士の委員を複数選任すべきである。
(以上同趣旨2013年9月13日付日本弁護士連合会「震災関連死に関する意見書」)
(以上同趣旨2012年9月24日付岩手弁護士会「災害関連死の審査方法に関する要望書」)

 

 

第2 緊急声明の理由

1 審査は地元市町村で行われるべきである

2016年5月11日、NHKは熊本地震の「震災関連死」の認定について、県と市町村で意見交換会が開催されること及び市町村から審査を県に委託したいという要望が出されていることを報じた。
熊本地震の被害は甚大であり、被災市町村は、避難所の集約、仮設住宅の設置、復興計画の策定等、多大な業務を抱えている。被災市町村が抱える業務のうち、県等に委託しても差し支えない業務とそうでない業務の仕分けは重要であり、国と県は、市町村へのより一層の職員派遣等を含めた支援を早急に行うべきである。

 

しかし、亡くなられた被災者とご遺族にとって、関連死の審査が適切になされることは極めて重要である。関連死の審査は、弔慰金の支給不支給を決するだけでなく、災害の影響で死亡したかどうかを公的に認定する手続である。災害による死亡として数えられるかどうか、周年行事に遺族として呼ばれるかどうか、慰霊碑に刻まれるかどうか等に影響する。その結論は、突然の死をどう受け止めるか、という遺族の内心にも大きな影響を与えるものである。

 

したがって、復興計画を地元市町村が策定しなければならないことと同じく、震災関連死の審査は、是非とも地元市町村において適正に行わなければならない。例えば、岩手県沿岸で唯一県に委託することなく、自ら審査にあたった山田町の担当者は「関連死が認定されれば、災害弔慰金や義援金など多くの支援を受けられる。正確な判定をするために力を尽くすのは、同じ町民として当然のこと」と述べている(2014年3月12日毎日新聞より)。
なお、東日本大震災後、厚生労働省が各事務担当者宛に事務連絡を発出したのは約50日後の2011年4月30日、厚労省が審査委員会設置に関する通知を発出したのは約3か月後の6月17日、山田町の審査会開催されたのは震災半年後の9月6日、岩手県が審査委員会を設置したのは震災約8か月後の11月である。

 

 

2 東日本大震災における教訓

東日本大震災において、岩手県と宮城県内の多くの市町村は、県に審査を委託した。しかし、その結果、県に設置された審査委員会における認定率が、市町村に設置されたほとんどの審査委員会の認定率を下回るなど、様々な問題が発生した。

 

適正な認定を行うためには充実した調査が必要不可欠であるところ、亡くなられた方の通っていた病院がどこか、受けていた介護サービスの内容、交友関係等、調査の端緒となりうる情報は市町村が把握している。市町村であれば元々ある情報に基づいて充実した調査を行うことができても、県では困難である。さらに、地元における被災の程度、ライフラインの回復状況、物資の供給状況や地域毎の被災者の窮状は、地震災害においても市町村毎に異なっている。その実情を、正確に把握できているのは県ではなく市町村である。

 

さらに、県に委託した市町村では、以下の様な問題が生じている。

ア 震災関連死の審査に係る「申請件数」自体が少ない。特に宮城県に委託した市町村で震災後6ヶ月以上経過した後に亡くなられた件に関する「申請件数」が著しく少ない。
イ 委託した場合でも、審査主体は市町村であり、不支給の決定は市町村が行うところ、審査を実際に行っていない市町村は不支給となった理由を十分に把握できないため、遺族への丁寧な説明が困難となる。
ウ 審査に必要な調査の中には、地元市町村しか行えないものがあるため、市町村の負担はさほど軽くならない。

 

例えば委託を受けた岩手県災害弔慰金等支給審査会の委員を務めた宮本ともみ教授は「弔慰金支給の判断に適しているのは被災した地元市町村である。というのは、住民の状況あるいは被災地の現状を肌身で感じているからである。市町村はいちいち委託先の審査会に資料を送り判断を仰ぐことよりも、よほど迅速に医療機関や福祉施設などに必要な調査を行うことができる。また、住民にも直接説明をすることができる。住民の感情面でも、委託先の審査会の判断というのと、地元自治体判断というのでは受け止め方が異なる。」と、委託を受けた県の審査委員でありながら、市町村で審査を行う重要性を具体的に指摘している(『災害復興の法と法曹』51頁、2016年、成文堂)。

 

また、自分の町で審査することを決断した岩手県下閉伊郡山田町の沼崎喜一前町長は「住民に納得してもらうため、町だからこそ丁寧な審査ができる」と指摘し、山田町で審査にあたった委員の平泉宣医師は「山田町の審査ならば、通院歴がないだけでは退けず、自殺当時の状況を詳しく調べる。盛岡市で開く県の審査会は被災地から遠く、審査件数も多いので、地元の情報や資料の入手に限界があるのではないか」と指摘している(いずれも2014年3月12日毎日新聞より)。

 

 

3 法律の趣旨と小括

災害弔慰金の支給等に関する法律は、災害弔慰金の支給を、被災者に最も身近な基礎自治体である市町村に委ねている。被災市町村はこの趣旨と東日本大震災における教訓を踏まえ、審査を県に委託することなく、それぞれ審査委員会を設置し審査すべきである。また国や県は、市町村が審査会の設置等を負担少なく行えるよう、職員の更なる派遣も含め、必要な支援をすべきである。

 

 

4 審査委員には、弁護士委員を複数(できれば3名)選任すべきである

震災関連死の審査は、一義的には被災市町村が行う。しかし、市町村の判断の是非は裁判所の取消訴訟等で判断されることになる。明確な審査基準を策定するためには判例の集積が必要不可欠であるが、残念ながら震災関連死の審査にかかる判例の数は少なく、明確な審査基準を策定することは困難である。仮に政府が基準をつくっても、三権分立である以上、裁判所は独自に判断をすることになる。
そこで、「判断主体」と「判断手法」を、裁判所におけるそれとを可能な限り同じくすることで、裁判所で下される結論と市町村における結論の齟齬を減らすことが重要となる。

 

震災関連死の認定において問題となり,審査会の審査の対象となる因果関係は「法律上の相当因果関係の有無」である。裁判所では、この有無を3名の裁判官が合議の上で判断している。

 

そこで、審査委員に弁護士を複数(できれば3名)選任した上で、最終的な結論を弁護士委員の合議に委ねること等で、「判断主体」と「判断手法」を裁判所と可能な限り同じくすることができる。もちろん、審査には医師の委員が必要である。特に震災関連死の審査においては、被災者の抱えるストレスを正しく認定し考慮する必要があるので、外科、内科に加え、精神科の医師等の選任が必要である。しかし、判断対象が「法律上の相当因果関係の有無」という法律事項であり医学上の因果関係でないこと及び裁判所における判断は裁判官3人が合議で行っていることに照らせば、弁護士を複数(できれば3名)選任し、適正な審査を行うべきである。

以 上

 

 

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