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コラム
2016.06.20
コラム

ドラマ99.9の最終話では、いま考えられる最も重大な問題が提起されています。

それは、DNAの証拠への過剰な依存です。
DNA鑑定への信用性は確かに上がっています。

えん罪であった足利事件のときと、今のDNA鑑定は「レヴェル」が違います。

 

しかし、今回のドラマでも描かれていますが、DNAを用いて、誰かをはめること、犯人にしたてることは、あまりにも容易です。

今回は「血液」だったので少し難しそうに見えますが、髪の毛や唾、爪でもはめることができます。それこそ、例えば精液でも使ってはめられたら、一瞬でわいせつ事件の犯人にされてしまいます。

 

さらに、DNA鑑定の結果を用いて、自白を迫る取り調べも、実際に行われています。

DNA鑑定、といういかにも強そうなものを示し、

おまえは犯人だ、記憶違いじゃないのか、記憶がすっぽり抜けているだけじゃないのかと、連日連日迫り続けるわけです。

ある意味、洗脳していく課程にも近いと感じることがあります。熱意があり腕がある弁護士がついていれば、その洗脳に染まらないよう防御をすることはできますが、そうでなければ自白をとられてしまいます。あなたであってもです。

 

そして、仮に自白がとられなかったとしても、本当に残念なことですが、

運良く心ある裁判官にでもあたらない限り、

「DNA→有罪」という結論になります。一見客観的だからこそ、それぐらいDNAの証拠は強いです。

 

弁護人が「はめられたんだ」ストーリーを示したとしても、今回のドラマのように、弁護人が真犯人でも見つけない限り(至難の業ですが)、相手にされません。

「はめられた」とか「証拠が改ざんされたんだ」というような主張を法廷でしても、

ほとんどの裁判官は「また弁護士がアホなことを言っている」という冷ややかなリアクションしか示しません。

 

実際は、ドラマで描かれたようにDNAを用いて誰かをはめることや、

誰かを犯人にしたてることは容易なのに、「そんなことは起きない」、

そんなドラマみたいなことは自分の法廷では起きないと、ほとんどの裁判官は高をくくっています。

 

さらに、今回のドラマはあと二つも重大な問題を描いています。素晴らしいストーリーだと思います。

 

一つは、アリバイの主張が後出しじゃんけんでつぶされることです。

これは、実際の実務でもよく起きています。

警察、検察は強大な捜査権力を持っていますので、補充捜査をすることでアリバイをつぶしたり、疑わしいことにしてきます。他方、弁護士にできることはたかがしれていますので(ドラマでは土下座で無力さが描かれていますよね)、

アリバイの主張がつぶされることは実際にもあります。だからこそ、弁護人は「いつアリバイの主張を出すか」を悩みます。

また、今回のドラマのように、訴因の変更という方法でつぶされることもあります。酷いときは、裁判官が「訴因の変更」を検事に促すことすらあります。

 

そして、もう一つ描かれているのは、松潤が弁論で語っていた有罪率99.9%の問題です。これにも二つの側面があると感じています。

一つ目は、裁判官は、日々有罪の判決を書き続けるという問題です。

日々向き合う有罪事件の中で、まれにやってくるえん罪を見つけるのは至難の業です。人には慣れ、というものがあるからです。

例えるならば、日々大量生産される製品の中から、たった一つの欠陥品を見つけるように難しいということです。

 

もう一つの側面は検察や警察の姿勢の問題です。

検察は、真犯人を処罰し、無実の人を罰しない、という使命を負っています。

そしてその使命は、有罪率が99.9%であるからこそ、真犯人だけを起訴するという使命に変わります。

 

その結果として、この使命は「起訴をした事件は有罪にじなければならない」という使命に化けます。

メンツの面でもそうなのでしょう。強大な権力を扱うからこそ、過ちは許されない、という考えです。

 

起訴をしてしまったら、その後、疑いを感じさせる主張が出ても、証拠が出てきても、
彼らは有罪にするための主張や補充捜査に専念します。その疑念は頭から消すしかないわけです。

 

さらに警察は、起訴をしなくても、一度逮捕をしたら有罪にすることに固執します。
逮捕の事実は新聞に報じられ、その瞬間にその人の人生は大きく変わってしまうからです。

過ちは許されないからこそ、逮捕した以上有罪にするという使命に化けます。

 

結局、彼らは、自分たちだけでは立ち止まることができない、ということです。これは構造的な問題です。

 

10人の真犯人を逃すことがあっても、1人の無辜の者を罰するなかれ。疑わしき派被告人の利益に。

こういった刑事裁判の鉄則は、残念ながら守られていません。全くといっていいほど守られていません。本当に不都合ですが、これが真実です。

 

それはすなわち、他人事ではなく、明日あなたが、あるいはあなたの大切な人が、無実の罪で捕まるかも知れない、ということです。

 

99.9は、刑事弁護に力を入れている弁護士からみても素晴らしいドラマでした。

ぜひ続編をお願いしたいと思います。

 

2016.06.15
被災者・被災地支援

無題

 

4月24日のコラムで取り上げさせていただいた、

災害関連死・災害弔慰金の支給金額の運用見直しの件です。

 

この件が6月1日付けの内閣府通知により無事、見直されました。

 

東京の議院会館まで足を運んで取り上げていただくようお願いした者としては、これ以上嬉しいことはありません。熊本地震の災害弔慰金支給に間に合ったので、熊本地震の遺族から、新たな要件で支給されることになりました。

 

他にも、4月29日のコラムで言及させていただいた、義援金差押禁止法も、

無事成立にこぎ着けています。

 

また、5月12日のコラムで言及させていただいた、有志弁護士142名による共同緊急声明で言及した災害関連死の審査委員会設置についても、

先日の熊本県議会でとりあげられ、無事県への委託は行われず、市町村に設置、それを県が支援、という方向に進んでいます。

 

弁護士は、もちろん目の前の方のために全力を尽くす仕事です。

しかし、実はそれだけではなく、不十分な法制度の改善に努力する義務を負っています。制度を改善できれば、自分が個別救済するのとは比べものにならないほど多くの方の権利を実現、救済することができます。

今後も、災害関連を中心に、微力ながら立法活動にも取り組んでいきたいと思っています。全くお金にはなりませんが…。

 

内閣府の通知はこちら→ 災害弔慰金等の支給の取扱いについて

報道は以下のとおりです。

 

災害弔慰金 支給要件見直し

http://www3.nhk.or.jp/lnews/morioka/6043160641.html

 

内閣府は、災害で死亡した人の遺族に支給する災害弔慰金の支給要件を見直し、家計を主に支える人が死亡した場合は遺族の収入に関わらず、満額の500万円を支給することになりました。
要件の見直しは東日本大震災の遺族などが求めていたもので、熊本地震の遺族から適用されます。
災害弔慰金は、国などが災害で死亡した人の遺族に支給しているもので、死亡した人が▼家計を主に支えていた場合は500万円、▼そうでない場合は250万円が支給されます。
このうち、家計を主に支えていた人については、昭和50年の旧厚生省の通知に基づいて、遺族の年収が103万円を超える場合は半分の250万円しか、支給できないとしてきました。
東日本大震災では去年3月末までにあわせて2万件あまりの災害弔慰金が支給されましたが、500万円が支給されたのは全体の19%で、遺族や専門家が「共働きが多い現在の社会情勢を反映していない」などとして、要件の見直しを求めていました。
内閣府は、通知が出された時と社会情勢が変わったとして、6月1日付けで家計を主に支えていた人が災害で死亡した場合は、遺族の収入に関わらず、満額の500万円を支給するよう都道府県に対して、新たな通知を出しました。
この要件の見直しは、ことし4月の熊本地震の遺族から適用されます。
今回の見直しについて、岩手県陸前高田市で被災者から災害弔慰金の相談を受けている在間文康弁護士は、「東日本大震災の教訓を踏まえた判断で今後の被災者を勇気づける大きな一歩だと思う。災害弔慰金が満額、もらえないことで、遺族からは『自分が働いているがゆえに家族の命の価値が減ってしまった』という声も上がっていたので、今回の変更は非常に大きな意義があると思う」と話していました。

06月15日 17時57分

 

2016.06.13
過去取扱い事件

 

【事件の概要】

既に複数回家庭裁判所に送致されたことのある少年が、保護観察中に、新たな非行事件(建造物侵入・窃盗)が発覚した。

 

【結果】

少年院送致を免れ、保護観察処分となり自宅に戻ることができました。

 

【ポイント】

少年事件では、大人の刑事事件と異なった視点での弁護活動が必要となります。

被害弁償等も大事ですが、それ以上に少年と向き合い、対話を重ね、内省を深めてもらい、それを裁判官に評価して貰うよう活動する必要があります。

本件では、親や職場等の環境調整をするとともに、少年と対話する回数を多く持ち内省を深めてもらい、裁判所にもこの点を評価してもらうことができました。

また、経済的に厳しいという事情もあったため、被疑者段階・付添人段階ともに国選弁護事件となりましたが、審判の中で経済的に厳しいこと、費用負担させないことが更生にも重要であること等を示すことで、弁護士費用を本人に負担させないという結論になりました。この点でもよかったと感じております。

 

当事務所では、刑事事件はもちろん、少年事件にも力を注いでいます。

早めの相談が重要ですので、まずはお気軽にご相談下さい。

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2016.06.09
コラム

 

このたび、マガジン9にインタビューが掲載されました。

 

〜「憲法おしゃべりカフェ」で流布されている〜
「緊急事態条項」をめぐる「四つのデマ」を検証
http://www.magazine9.jp/article/other/28374/

 

ちょっとショッキングなタイトルではありますが…、次の2つのインタビュー記事の続編的なものです。

国会でも議論されている、憲法を改正して緊急事態条項を設ける必要があるか、ついての記事です。

 

災害の現場で必要なのは「国家緊急権」ではない

http://www.magazine9.jp/article/konohito/23087/

 

緊急事態条項の導入は「災害」を名目にした「戦争への準備」

http://www.magazine9.jp/article/konohito/23097/

 

マガジン9さんは、「憲法と社会問題を考えるウェブマガジン」です。

沖縄の関係では、ジャーナリストの三上智恵さんの連載が掲載されています。

 

 

ウェブマガジンということで文字数に限りがないこともあり、

こちらの伝えたいことをしっかり書いていただけるので感謝しています。

 

東日本大震災が起きたときたまたま被災地にいて、その後、5年間被災者支援に携わってきた弁護士としては、「災害対策」をダシにして憲法を改正しようとする動きは、決して見過ごすことができないと思っています。

この件でメディアに取り上げられたからといって、正直事件の依頼が増えるわけでも何でもないのですが、災害直後の善意による支援を受けた以上、その善意が悪用されるのを見過ごすことはできない、知っている以上、声を上げて「否」と言うのは使命だと考えています。

 

7月10日の参議院議員選挙により、憲法を改正したいと考える人々の議席が増えた場合には、今年、来年、再来年とずっと憲法改正が話題になり続けると思います。「災害対策」をダシにされ、それが不合理であるならば、矢面に立って声を上げていこうと思っています。

 

今回の記事も、ご一読いただければ幸いです。

 

無題

 

2016.06.05
コラム

 

話題のドラマ99.9の第8話では、弁護士が逮捕され被疑者になる、というストーリーが描かれました。

 

「一度捕まって被疑者になってみたい」 これは、弁護士同士がよく話す、夢?です。

 

被疑者のつらさをリアルに知りたいし、取り調べも受けてみたいからです。

弁護士になる前の「司法修習」という段階で、取り調べをみたり、実際に取り調べをしたりもしますが、

それは検察の取り調べであって、警察のではありません。

 

日常的に聞く警察の取り調べは本当に酷いものでして、ぜひ体験してみたい、という話になります。

また、検察の調べでも、「否認事件」となると話は別のようです。容赦はしない、といった感じで、彼らも彼らなりの正義を実現するため「司法修習」でみたそれとは明らかに別のことが行われれています。被疑者被告人が異口同音に話す本気の取り調べを受けてみたい、ということです。

 

さて、ドラマは被疑者である深山(松潤)が弁護人に次々と指示を出すことで進んでいきます。

そのときの決め手は「そっち(外)にいるよりこっち(中)の方が情報が入ってきます」というセリフでした。

 

実際に「情報」は弁護人より被疑者・被告人が持っています。

なぜなら、

・事件について体験を通じて知っている

のは当然ですが、

・警察や検察の取り調べでぶつけられる「質問」や「資料」の中に情報があるからです。

 

弁護人が証拠をみられるのは、基本的に起訴された後、検察が開示したものだけです。

 

例えば取り調べの中では、「Nシステム」といって、ナンバーを読み取る資料を見せられたりしますが、いざ裁判になるとこういった資料は出てきません。開示を求めても、公には「Nシステム」はないことになっているので、開示されないのです。

 

そこで弁護人は、被疑者・被告人との面会のときに、

・どういうことを警察や検察から聞かれているか

・どんな資料を見せられたか

を尋ねます。そこから、捜査機関側の見立てと、捜査機関側が根拠にしている証拠にどんなものがあるかを探るためです。

もし弁護士が逮捕されたら、ドラマのように被疑者が弁護人に指示を出しそうな気もします。

 

 

もう一つ、深山(松潤)が恨みをかった傷害事件の方についてです。

 

恋人が有利な証言をしたい、と言えば、普通弁護人は証人申請をします。被告人が望めばなおさらです。しかし、その証言の内容が本当かは、批判的に検討します。後で嘘が発覚してしまえばマイナスだからです。検察の反対尋問に耐えられるか、追加捜査をされて証言に反する証拠が出てこないかを心配します。

 

検討の結果、証言が嘘だとわかれば、被告人のリクエストがあったとしても、弁護人は証人申請しません。

理由は二つ

・一つ目は、その証言を法廷に顕出してもプラスにならないから

・二つ目は、弁護士には消極的真実義務といって、嘘だとわかっていることを、積極的に立証してはいけないからです。

 

ドラマ99.9は、確かにドラマ用にアレンジはされていますが、

弁護士からみても面白いドラマです。続きも、続編にも期待したいです。

 

 

ちなみに、今回のドラマで実際と違うところは、

・取調中、検事が被疑者のリクエストに応えて犯行再現はしてくれない(笑)

・面会のときの透明なしきり(接見室のアクリル板)はあんなに綺麗ではありません^^

・ipadを接見室に持ち込んで動画を見せると、中の職員(刑務官)が文句を言ってきます。ときには面会が中止されることもあります。ご覧のとおり必要な弁護活動なので、文句を言ったり面会を中止させるのは違法です。

・傍聴席でハチマキでだめです(笑)

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