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2017.04.25
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ひょんなことから共謀罪について、沖縄、東京、大阪で講演をしたり、

日刊ゲンダイでも、今日から私の連載がスタートしました。縁というのは何とも不思議なものです。

 

さて、共謀罪の国会審議の影響で、裁判所における「令状審査」が機能しているか否かが話題になっています。西日本新聞の次の記事を参考に、コラムを書いてみたいと思います。

「共謀罪」令状却下あるの? 裁判所のチェック機能、実効性懸念も

https://www.nishinippon.co.jp/nnp/national/article/323956

 

裁判所の統計は、実は広くHP上で公開されています。

「司法統計」と言う言葉で検索をかければ、すぐに該当するウェブサイトが出てきます。

西日本新聞が引用している数字は、「平成27年度」「刑事事件編」で検索をかけると表示される資料の「15 令状事件の結果区分及び令状の種類別既済人員  全裁判所及び全高等・地方・簡易裁判所」からとったものであることがわかります。

 

刑事 平成27年度 15 令状事件の結果区分及び令状の種類別既済人員  全裁判所及び全高等・地方・簡易裁判所  

http://www.courts.go.jp/app/files/toukei/622/008622.pdf

 

平成27年度に、裁判所は逮捕令状を100,880出しています。

一方、却下数はたった62です。

【却下/発布=0.0006%】ですから、逮捕状却下の結論をもらうのは、万馬券をあてるより難しそうです。

 

逮捕状を請求するのは、基本的に警察です。警察は様々な捜査をして、それを「書類」にまとめて裁判所に出します。裁判官は、その書類だけを見て、逮捕状を出すか出さないかを決めます。逮捕発布の対象である「被疑者」から事情を聞くことは、もちろんありません。先日、韓国の前大統領が、逮捕状発布前に裁判所から事情を聞かれていたのには驚かされました。日本では、まずあり得ない出来事だからです。

 

上記の統計のとおり、よっぽどのことがない限り、裁判官は逮捕状を出しています。

少し疑問をもつと、裁判官は警察に電話をして、こういう点について判断がつかないので発布できないでいることを知らせます。つまり事実上、証拠を追加で出すようにというやりとりがされています。取下数が1,373にも及んでいるのは、こういうやりとりがあるからです。

 

【却下/発布=0.0006%】という数字を見て、みなさんはどう感じられますか?

 

「わが国においては裁判所による審査が機能しており、捜査機関による恣意的な運用ができない仕組みになっている」

これは、金田法務大臣の国会答弁ですが、みなさんもそう感じられますか?

 

答えは三重に「否」です。

1 残念ながら、チェック機構として、裁判所の令状審査は機能していないと言わざるを得ません。「ザル」という批判を免れられない数字と言わざるを得ないでしょう。

 

2 そもそも令状審査には限界があります。捜査機関がつくった資料のみで判断するからです。しかも、実は警察から提出される資料の多くは「捜査報告書」という、警察官が自分の認識、記憶に基づいてつくた報告書です。つまり、客観性がもの凄く乏しいと言うことです。
特に、我が国では「逮捕=犯人」という風潮がありますから、逮捕状の発布に間違いがあってはなりません。厳格に審査されなければならないのですが、残念ながら上記のとおりです。せめて他国のように、裁判官が逮捕状を出す前に本人の言い分を聞くという手続きを設ける「法改正」を検討すべきでしょう。

なお、警察の仕事は逮捕状を取るまでは「犯人を捕まえること」です。しかし、逮捕状が出た後の警察、検察の仕事は、「逮捕した人を有罪にすること」です。逮捕状の発布を厳格にしなければならない理由は、ここにもあります。一度逮捕したら、「逮捕」が間違いでなかったことを示すためにも、警察と検察は、逮捕した人を有罪にするため、真犯人にするために頑張ります。そして、数多くのえん罪が生まれているというのが日本の現状です。

 

3 捜査機関において恣意的な運用ができるかどうかと、裁判所による審査が機能しているか否かは、そもそも別の問題です。

「どういう件を事件化して、逮捕状を請求するか」、これが警察において「恣意的な運用」ができるかどうかという問題です。

裁判所による審査は、「警察が請求したものを間違えずに判断できるか」という問題ですから、二つは似て非なる問題です。

 

入社試験で例えれば、どういう会社にエントリーするかという問題と、会社による選抜が公正にされているかは別の問題ですよね。金田法務大臣の答弁は、この意味で、根本的に間違っています。

 

本来、捜査機関はあらゆる事件を公平公正に見て、事件化するかしないか、逮捕状を請求するかしないかを判断しなければなりません。しかし実際はそうなっていません。

例えば、「警察官」自身に容疑がかかった場合、他の事件に比べて逮捕されにくいという現状があります。身内に甘いということです。甘々です。

例えば、政府の意向に反対している人に対しては、厳しく運用されているという実態があります。沖縄で米軍基地建設に反対している人たちには、極めて厳格に、要するに「ちょっとしたこと」ですぐに逮捕されています。その状況は、余りにも他の事件における運用と異なっています。基地関係で捕まった人の事件をみるたびに、「こんな微罪の事件、他でみたことない」という感想を持ちます。

その酷さは、統計上も顕著に表れています。詳しくは、こちらのコラムをご覧下さい。

 

統計から見る刑事弁護と高江の不当逮捕