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コラム
2018.06.01
コラム

逮捕をされると、すぐに警察の取調べが始まります。普通の人は法律のことは知りませんので、自分の権利として何があるのかや、この先どうなるかがわかりません。そんな不安な状況で身体を拘束をされることになります。

我が国の原則は、弁護士は、個人が自費で雇うもの。弁護士は純粋な民間事業者です。

 

(2006年9月までの状況)

国が弁護士を付けるのは、裁判になったときだけ。裁判を弁護士なしで行うのは大変なので、裁判をするときは国が弁護士を付ける(被告人の国選弁護)。その費用は一旦国が支出し、本人に負担させるかどうかは、裁判官が判決のときに決めるというのが2006年9月までの状況でした。

 

その結果、多くの事件では、裁判になるまで弁護士が付かないことになりました。厳しい取調べにより、虚偽の自白が増え、多数のえん罪事件を生みました。

 

弁護士は純粋な民間事業者ですが、弁護士法により、「基本的人権の擁護と社会正義の実現」を使命とされています。

この状況を放置すべきではない、ということで、1990年に大分弁護士会が当番弁護制度というのを始め、全国に広がりました。捕まったら一度だけ弁護士を無料で呼べる、捕まった人の費用負担はなしという制度です。

 

会いに行った弁護士の負担はどうするかというと、弁護士会が支払っていました。依頼にならない場合は1回5000円です。もちろん、支払う側の弁護士会にも国のお金は入ってきません。弁護士会の収入は、弁護士が毎月支払う会費(日弁連分も入れると毎月5~10万ぐらいです)。

要するに、弁護士が自分達の自腹で、捕まった人のためにに弁護士を派遣するという制度です。

 

この当番弁護制度により、裁判になる前の時点において、弁護士を必要とする「需要」が明確になりました。その必要性も、弁護実績から明らかになりました。弁護士会は、裁判になる前、被疑者段階で国選弁護人を付けるよう継続的に活動をし続けました。

 

同時に、全国のどこでも、速やかに弁護士が弁護人になれる体制作りにも取り組みました。

日本弁護士連合会は、全ての会員(弁護士)から、毎月一定の額を徴収し、ひまわり基金という基金をつくり、そのお金で、裁判所はあるけれど弁護士がいない司法過疎地域に法律事務所をつくる活動を始めました。

 

(2006年10月から)

以上により国が動き、2006年10月から、一定以上重い罪については、勾留(逮捕の次の手続きで、逮捕された翌日か2日後ぐらいから始まります)段階で、国が国費で弁護士をつけることになりました。2009年5月には対象事件が拡大されました。
※もちろん、自費で弁護士を頼める方はそちらを利用する前提

 

また、国が費用を出して、司法過疎地に法律事務所を設置する活動も始まりました。

 

(今日(2018年6月1日))

その後も弁護士会は法改正に向けた活動を続けました。今日(6月1日)は、全ての事件に対し、勾留段階で国選弁護人が付く制度になった、少しだけ記念すべき日です(刑事訴訟法の施行日)。

 

 

ぜひ、知って頂きたいのは以下のことです。

1 ここまで辿り着くのに、弁護士や弁護士会が流した汗と、費用のことをぜひ考えていただきたいです。本来、これは民間事業者に負担させる性質のものではなく、国がやるべきことだからです。

 

2 今日以降ですら、逮捕~勾留の段階は、国選弁護制度の対象になっていません。逮捕されたら、ぜひ弁護士会の当番弁護制度を利用して下さい。弁護士会は、だいぶ昔から、全ての事件で逮捕時から国費で弁護人がつく制度を求め続けています。

 

※例えば、2015年の統計によると、年間50,705件も当番弁護士は派遣されています。このうち、弁護士が駆けつけたけれども、依頼にはならなかった、つまり一回会うだけになった件が27,847件あります。この場合弁護士会から弁護士に5000円が支給されており(原資は弁護士が毎月納めた会費)、その総額は、通訳代も合わせて2015年度だけで1億4874万円です。

※ピーク時の2006年度には、年間67,826件も当番弁護士は派遣されています。

 

 

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