去る2026年6月17日、朝日新聞において、憲法改正と緊急事態条項に関する特集が掲載され、当事務所の弁護士・小口幸人の意見が大きく取り上げられました。
近年、緊急事態条項は、大規模災害や感染症、有事への備えとして語られることが多くなっています。
一見すると、「非常時に備える制度なのだから必要ではないか」と感じられる方も少なくないと思います。
しかし、憲法に緊急事態条項を設けるということは、単なる災害対策にとどまりません。選挙や国会の在り方、さらには国家権力と国民の権利との関係にも関わる、憲法上極めて重要な問題です。
「緊急事態だから」で済ませてよいのか
私自身、このテーマについては、日本弁護士連合会の災害復興支援委員会で携わるようになり、約10年間、国会の憲法審査会を継続して傍聴するとともに、講演や研修会、国会議員や政党への説明など、様々な形で発信を続けてきました。
その中で強く感じるのは、「緊急事態だから」という理由だけで制度を議論するのではなく、まずは次の点を具体的に検証する必要があるということです。
- 現行憲法や現行法制では、本当に対応できない場面があるのか
- 対応できない場面があるとすれば、それは具体的にどのような場面なのか
- 憲法改正によって、国会・選挙・国民の権利にどのような影響が生じるのか
こうした検証を十分に行わないまま、「憲法を変えれば解決する」という議論になってしまえば、本来向き合うべき課題を見失ってしまうおそれがあります。
憲法は、非常時にも守られるべき基本ルールです
災害や有事への備えは、もちろん必要です。
しかし、その備えが国民の権利や民主主義のあり方とどのように調和するのかは、慎重に考えなければなりません。
憲法は、国の基本ルールです。一度改正すれば、その影響は長く将来に及びます。
だからこそ、賛成・反対という立場を超えて、多くの方にこの議論へ関心を持っていただき、自ら資料や国会審議に触れていただければと思います。
これからも、一人の弁護士として、また憲法問題に関心を持つ者として、事実に基づいた情報発信を続けてまいります。




