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コラム
2016.07.08
コラム

 

今日(2016年7月8日)の沖縄タイムス

「揺らぐ憲法」第2部くらしの中での最終話「識者の視点」に、弁護士小口幸人のコメントを掲載いただきました。そこで伝えきれなかった点を、少しお伝えさせて頂きます。

 

・日本国憲法は、憲法改正に、衆議院と参議院、両方について2/3以上の賛成を必要としています。

参議院議員の任期は6年の半数改選ですから、最低でも参議院議員選挙2回、衆議院議員選挙1回の合計3回、6年間もの間、憲法を変えるべきだと国民が判断し続けたときに、初めて憲法改正の発議がされるという制度になっています。

この点を指して、日本国憲法は「硬性憲法」、かたい憲法だと言われています。

かたくなっている理由は、民主主義はときに流されやすく誤ることがあるからです。一時の盛り上がりで、安易に憲法が変えられないようになっています。

 

・安倍首相は在任中の憲法改正を明言していますから、週末の選挙の結果によっては、記事にもあるように、

来年の通常国会で憲法改正の発議、再来年に国民投票が行われる可能性が高いです。

(国会の発議と国民投票の間には、60日から180日の周知期間が必要だとされています)

 

・以上の2点を合わせていただければ、今回の参議院議員選挙において「憲法で何をどう変えるのか」が具体的に示されることなく、憲法改正の発議がされそうになっている今の状態が、いかに残念な状態であるかがおわかりいただけると思います。せっかくかたい制度になっているのに、憲法が国民投票という一時点の盛り上がりだけで改正がされそうになっているからです。

 

・もう一つ残念なのは、今週末の選挙結果で改憲勢力が2/3の議席を占めた場合、秋の臨時国会も、来年の通常国会も、国会審議は憲法改正一色になる可能性があるということです。

去年の安保法案の国会のようにです。

 

昨年の通常国会では、安保法案に多くの時間が割かれ揉めた結果、他の法律は後回しになり多くの法律は廃案になりました。さらに臨時国会は召集さえされませんでした。

今年はというと、参議院議員選挙が予定されていたため、通常国会は6月1日に閉じてしまいました。

 

その結果、国会で話し合っていただきたいテーマが、たくさん残ったままになっています。

秋の臨時国会と来年の通常国会では、溜まったものを一気にやっていただきたいのですが、憲法改正一色になってしまいそうだ、ということです。

例えば、法律業界では「民法改正」という大テーマがあるのですが、改憲勢力が2/3をしめた場合、先送りされてしまうでしょう。

憲法改正への賛否を別に置くとしても、そこまで優先順位は高いのかという疑問を感じます。

 

・私は脱サラして、ロースクールに通ったことで憲法を読み直す機会を得ました。学生の頃不勉強だった私は、大人になってから、日本国憲法の凄さを知りました。弁護士に日本国憲法好きが多いのは、読み直して素晴らしさを知ったからだと思います。他の法律と比べても、日本国憲法は理念としても精緻さとしても、日本語としての美しさとしても、よくできていると感じます。

 

・70年前戦争に負けて憲法は突然変わりました。臣民から国民に、家父長制から男女平等に、表現も自由にできるようになりました。憲法が突然変わっても社会は突然変わらないので、最初は違和感たっぷりだったはずです。例えば、男女平等はまだ社会の現実と整合してないですよね。
・例えていうなら、70年前に変わった、憲法という洋服は、一人ひとり違うことを尊重するという寛容を旨とする大人な柄でした。最初は似合わなかったはずです。

 

・70年経ってその洋服は古臭くなったのか、それとも身体が成長してようやく洋服がシックリ似合うようになったのか、まずは憲法を読んで確認する必要があると思います。もし70年も時代遅れにならない素敵な服を着ていたとしたら、気づかずに捨ててしまうのは余りにもったいないと思います。そして、私は、今すぐ慌てて憲法を改正する必要はないと感じています。

 

・SMAPの「世界で一つだけの花」という名曲があります。「一人一人違ってよい」「ナンバー1ではなく、特別なonly one」だという曲です。

私はあの歌は、戦後直後とか、高度経済成長期だったらあそこまで大ヒットしなかったと感じています。戦後70年経って、一人ひとり違うことを尊重できる社会になってきた、ようやく「日本国憲法」という服が似合う大人になってきたからこそ、みんなの共感を呼び大ヒットしたのだと思います。

 

・70年経ったから時代遅れになった、そう思いがちですが、そうとは限らないこともあるはずです。まずは読んでみて確認しましょう。

 

 

※日本国憲法の代表的な条文をいくつか貼り付けておきます。

送り仮名は確かに時代を感じさせますが、肝心の中身はどうですか?

 

第十三条  すべて国民は、個人として尊重される。生命、自由及び幸福追求に対する国民の権利については、公共の福祉に反しない限り、立法その他の国政の上で、最大の尊重を必要とする。

 

第十四条  すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

 

第九十七条  この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである。

 

第十二条  この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない。又、国民は、これを濫用してはならないのであつて、常に公共の福祉のためにこれを利用する責任を負ふ。

 

前文
日本国民は、正当に選挙された国会における代表者を通じて行動し、われらとわれらの子孫のために、諸国民との協和による成果と、わが国全土にわたつて自由のもたらす恵沢を確保し、政府の行為によつて再び戦争の惨禍が起ることのないやうにすることを決意し、ここに主権が国民に存することを宣言し、この憲法を確定する。そもそも国政は、国民の厳粛な信託によるものであつて、その権威は国民に由来し、その権力は国民の代表者がこれを行使し、その福利は国民がこれを享受する。これは人類普遍の原理であり、この憲法は、かかる原理に基くものである。われらは、これに反する一切の憲法、法令及び詔勅を排除する。
日本国民は、恒久の平和を念願し、人間相互の関係を支配する崇高な理想を深く自覚するのであつて、平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した。われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去しようと努めてゐる国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思ふ。われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する。
われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。
日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。

 

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